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歯周病と全身の健康の関係|糖尿病・心疾患との関連を東京の歯科が解説

こんにちは。代官山WADA歯科・矯正歯科の歯科医師です。
診療をしていると、「歯ぐきの出血や腫れが、体の病気と関係するなんて思いもしなかった」とおっしゃる方にしばしば出会います。歯周病は口の中の病気だと思われがちですが、実際には慢性的な炎症が全身へ波及し、糖尿病や心血管疾患と密接に関わることが分かってきました。今日は、歯周病と全身の健康がどう結びつくのか、最新の考え方をふまえつつ、日常で何を意識すればよいかを丁寧にお伝えします。

 

 

1. 歯周病はなぜ「口だけの問題」ではないのか

歯周病は、歯と歯ぐきの境目で細菌の塊(プラーク)が増え、慢性炎症を引き起こす病気です。炎症は局所の出来事に見えますが、実際にはサイトカインと呼ばれる炎症物質が血液を介して全身を巡ります。歯周病が長く続くほど、体は常に軽い炎症に晒されているのと似た状態になり、血糖コントロールや血管の健康、免疫バランスに影響が及びます。口の中の変化が、体の“土台”に揺さぶりをかける――この視点が、近年の医療ではとても重要になっています。

 

2. 体の中で何が起きている?炎症が全身へ広がる仕組み

歯周ポケットの中では、嫌気性菌が増えて膜のようなバイオフィルムを形成します。そこに免疫細胞が反応して炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α など)が産生され、血流に乗って全身へ。さらに、歯みがきや咀嚼の刺激で一過性の菌血症(細菌が血中に入り込む状態)が起こることもあります。炎症物質や細菌成分は肝臓や血管内皮でも反応を引き起こし、インスリン抵抗性の悪化、動脈硬化の進展、凝固能の変化といった“静かな不調”を重ねていきます。自覚症状が乏しくても、見えないところで少しずつ全身のリスクが積み上がる――これが歯周病の厄介な点です。

 

3. 糖尿病との関係――「双方向」に悪化させ合う理由

糖尿病があると、歯周病は進みやすく治りにくくなります。高血糖は末梢の血流を悪化させ、感染防御に関わる好中球の機能も低下させます。傷の治りが遅い、炎症が長引く――こうした背景が歯周組織にも起こるため、同じケアをしていても歯ぐきの状態が整いにくいのです。

一方で、歯周病があると血糖コントロールが乱れやすくなります。慢性的な炎症がインスリンの効きを悪くする(インスリン抵抗性が高まる)ためで、結果としてHbA1cの改善が頭打ちになることがあります。歯周治療をきちんと行うと、薬剤を変えずともHbA1cがわずかに下がる例がある、というのは臨床でも珍しくありません。もちろん個人差はありますが、「口を整えることが血糖を支える」ことは確かな実感としてあります。

この“双方向性”を理解しておくと、日々の選択が変わります。例えば、夕方の甘い間食を減らし、就寝前の口腔清掃を丁寧に行うだけでも、翌朝の口のねばつきが軽くなり、出血が減り、血糖の波が穏やかになる方がいます。糖尿病治療と歯周管理は、別々の話ではなく、同じ船に乗っていると考えてください。

 

4. 心疾患・動脈硬化との関係――静かな炎症が血管を揺さぶる

心筋梗塞や脳梗塞の背景には、動脈硬化と血栓形成があります。血管の内側(内皮)が慢性的な炎症刺激に晒されると、プラーク(血管のこぶ)が不安定になり、破裂・血栓のリスクが上がると考えられています。歯周病の炎症物質や細菌成分は、この内皮機能に影響を与える可能性があり、心血管イベントのリスクと関連するという報告が増えています。

臨床の現場では、狭心症や不整脈の既往がある方の歯周管理を慎重に行います。出血や腫れを抑える清掃指導、痛みや不安を最小限にする治療計画、内科主治医との連絡を密にし、抗血小板薬や抗凝固薬を内服中でも安全にクリーニングを行う段取りを整えます。歯周病のコントロールは、単に口臭や出血を減らすだけではなく、心臓と血管にとっても穏やかな環境をつくる取り組みなのだ、と捉えていただくと良いと思います。

 

5. 東京の生活環境とリスク背景――忙しさ、ストレス、睡眠不足

東京で暮らす方の多くは、通勤や仕事の負荷、夜間のオンライン会議、接待や外食など、生活のリズムが不規則になりがちです。夕食が遅くなり、そのまま就寝してしまう、朝はバタバタして丁寧に磨けない、週末は疲れて受診が延びる。誰にでも起こりうることですが、これが続くと口腔内は一気に歯周病寄りに傾きます。

加えて、ストレスは睡眠の質を落とし、歯ぎしり・食いしばりを強め、歯周組織への負担を増やします。糖分に偏りがちな間食や、喫煙習慣が重なると、炎症と血管のダメージが積み重なります。大切なのは、完璧を目指すのではなく、自分の暮らしに合わせて「続けられる工夫」を一つずつ積み上げることです。例えば、遅い夕食の後だけは必ずフロスを通す、在宅勤務の日にまとめてクリーニングに行く、寝る前の5分だけはスマホを置いて歯を磨く。この程度の小さな調整でも、6か月後の歯ぐきはまったく違って見えます。

 

6. 受診時にお伝えいただきたい情報と、医科歯科連携の進め方

歯周病と全身疾患の関連を踏まえると、歯科受診の際に共有していただきたい情報がいくつかあります。最近の健康診断の結果(血圧、HbA1c、LDL・HDL・中性脂肪)、服用中の薬(抗血小板薬・抗凝固薬、糖尿病薬、ビスホスホネート製剤など)、喫煙の有無、睡眠や食習慣の状況。これらは治療の安全性や炎症のコントロールに直結します。

当院では、必要に応じて主治医の先生にお手紙で情報共有をし、血糖コントロールの目標設定や、内服調整の方針を確認しながら歯周治療を進めます。抜歯や外科処置が必要な場合も、抗凝固療法中の出血リスク、感染予防、痛みのコントロールまで含めて一つの計画に整理します。患者さんを中心に、医科と歯科が同じ地図を見ながら進むことが、結果的に安心と安全につながります。

 

7. 今日からできる実践――食事・清掃・習慣・通院をどう整えるか

生活の全てを変える必要はありません。むしろ、負担を増やさない工夫が長続きの鍵になります。夕食が遅い日は、歯と歯ぐきの境目を意識してゆっくり磨き、歯間部はフロスで仕上げる。コーヒーや甘い飲料は「回数」を意識して控えめにし、飲んだ直後は水をひと口。喫煙は本数を徐々に減らし、歯ぐきの血流を回復させる。寝不足が続く週は、無理にハードな運動を足すより、就寝前の歯みがき時間をいつもより一分だけ伸ばす。

通院は、まず今の状態を正確に知ることから。歯周基本治療で炎症を鎮め、清掃法を一緒に修正し、必要に応じて噛み合わせや装置の形態を整えます。クリーニングは「汚れを取る」だけではなく、出血点がどこか、磨き残しの癖がどこにあるかを“見える化”する作業です。数か月のサイクルでメインテナンスを続けると、糖尿病の方は出血点が減るにつれて朝の口のねばつきが軽くなり、心疾患をお持ちの方は歯ぐきの腫れが引いて咬合時の違和感が和らぐ、といった変化が見られることがあります。効果には個人差がありますが、口の中の炎症を減らすことが全身の負担を減らすことにつながる、という手応えは確かです。

 

8. まとめ:小さな出血を放置しないことが、将来の健康を守る

歯周病は、静かに進む慢性炎症です。口の中で起きている小さな出血や腫れは、糖尿病や心血管のコンディションともつながっています。完璧を目指さなくて構いません。できるところから生活を整え、定期的に口腔内をクリーニングし、炎症の芽を小さいうちに摘む――その積み重ねが、数年後の血糖や血管のリスクを確実に軽くします。

「最近出血が増えた」「口臭が気になる」「検診のHbA1cが上がってきた」――心当たりがあれば、歯科でのチェックをおすすめします。私たちは、医科の先生方とも連携しながら、長期の健康を見据えたサポートを行っています。どうぞ安心してご相談ください。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

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