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ペリインプラント炎とは何が違う?歯周炎との相違点と早期対応のポイント

こんにちは。代官山WADA歯科・矯正歯科の歯科医師です。
インプラント治療は、失った歯を補うための非常に有効な手段です。入れ歯のような違和感が少なく、ブリッジのように隣の歯を削る必要もありません。しかし、インプラントは人工物であるため、「虫歯にはならない」という安心感から、ケアが疎かになってしまうケースが少なくありません。
そこで最も警戒しなければならないのが、インプラント特有の歯周病である「インプラント周囲炎(ペリインプラント炎)」です。 「天然の歯の歯周病(歯周炎)と同じようなものでしょ?」と思われるかもしれませんが、実は進行のスピードや防御機能において、両者には決定的な構造上の違いがあります。この違いを理解していないと、気づいたときには手遅れになり、インプラントが抜け落ちてしまうリスクがあるのです。

 

目次

 

1. ペリインプラント炎(インプラント周囲炎)という病気の正体

まず、言葉の定義から整理していきましょう。インプラントの周りの組織に起こる炎症は、その進行度合いによって大きく2つの段階に分けられます。

 

一つは「インプラント周囲粘膜炎」です。これは、インプラントの周りの歯ぐき(粘膜)だけに炎症が起きている状態です。天然歯でいうところの「歯肉炎」にあたります。この段階であれば、適切なクリーニングとプラークコントロール(歯垢除去)を行うことで、健康な状態に戻すことが可能です。可逆的(元に戻る)な状態と言えます。

 

もう一つが、今回テーマとしている「インプラント周囲炎(ペリインプラント炎)」です。 これは、炎症が歯ぐきだけでなく、インプラントを支えている骨(歯槽骨)にまで及んでしまった状態を指します。天然歯でいう「歯周炎」に相当しますが、一度溶けてしまった骨は、自然には元に戻りません。不可逆的(元に戻らない)な状態であり、放置すればインプラントがグラグラと揺れ始め、最終的には抜け落ちてしまいます。

 

インプラント治療を受けられた患者様の中で、このインプラント周囲炎を発症する割合は決して低くありません。だからこそ、「入れた後」の管理が治療の成功を左右すると言っても過言ではないのです。

 

2. 【徹底解説】天然歯の「歯周炎」と何が違うのか?5つの相違点

「歯周病と同じようなものでしょう?」と思われるかもしれませんが、歯科医学的に見ると、天然歯とインプラントでは周囲の組織構造が全く異なります。この構造の違いこそが、病気の進行や治りやすさに決定的な差を生むのです。ここでは、5つのポイントに絞ってその違いを解説します。

 

違い①:防御の要「歯根膜」の有無

これが最も大きな、そして決定的な違いです。 天然の歯の根っこ(歯根)と骨の間には、「歯根膜(しこんまく)」という薄い膜状の組織が存在します。この歯根膜は、噛んだ時の硬さを感じたり、衝撃を吸収するクッションの役割を果たしたりするだけでなく、細菌の侵入を防ぐ強力なバリア機能を持っています。また、歯根膜には幹細胞が存在し、組織を修復する再生能力も備わっています。

 

一方、インプラントにはこの「歯根膜」がありません。インプラント体(チタン)は、骨と直接結合(オッセオインテグレーション)しています。つまり、天然歯が持っている「細菌の侵入を防ぐバリア」や「組織を修復する機能」が、インプラントには備わっていないのです。 このため、インプラントの周囲組織は、細菌感染に対して天然歯よりも無防備な状態にあると言えます。

 

違い②:組織への血流と免疫力の差

私たちの体は、細菌が侵入すると、血液中の白血球などが集まって細菌と戦う「免疫反応」を起こします。この免疫細胞を運んでくるのが血管です。 天然歯の場合、歯根膜や歯肉から豊富な血管網が張り巡らされており、炎症が起きても豊富な血流によって免疫細胞が動員され、細菌と戦うことができます。

 

しかし、インプラント周囲の組織は、天然歯に比べて血管の数が少なく、血流が乏しいという特徴があります。これは、先ほど述べた歯根膜(血管が豊富)がないことや、インプラント周囲の歯肉が瘢痕組織(傷が治った後の硬い組織)に近い構造になっているためです。 血流が少ないということは、細菌と戦うための免疫力が低いことを意味します。そのため、一度細菌が侵入すると、体の防御反応が十分に機能せず、感染があっという間に広がってしまうのです。

 

違い③:炎症の広がり方と進行スピード

天然歯の歯周炎の場合、炎症はまず歯根膜に沿って進み、その後、骨へと広がっていきます。歯根膜が「壁」のような役割を果たし、骨への直接的な侵攻をある程度食い止めてくれるのです。また、天然歯の周りのコラーゲン線維は、歯に対して垂直に突き刺さるように強固に付着しており、これも細菌の侵入を防ぐ砦となっています。

 

対してインプラントの場合、コラーゲン線維はインプラント体に対して平行に、ゆるく走行しているだけで、強固な付着はありません。さらに歯根膜というバリアもないため、細菌は組織の隙間を縫うようにして、骨髄(骨の内部)へと直接、そして急速に侵入していきます。 このため、インプラント周囲炎は「天然歯の歯周炎の10倍以上の速さで進行する」とも言われています。「少し腫れているかな?」と気づいた時には、すでに骨の半分以上が溶けてしまっていた、というケースも珍しくありません。この「進行の速さ」こそが、インプラント周囲炎の最大の恐怖です。

 

違い④:自覚症状の現れにくさ

歯周病は「サイレントディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれ、痛みがなく進行することが知られていますが、インプラント周囲炎はそれ以上に自覚症状が出にくい病気です。 天然歯には神経が通っていますが、インプラントは人工物なので神経がありません。そのため、炎症が起きて骨が溶け始めても、「しみる」「痛い」といった感覚が伝わらないのです。 また、インプラントは骨と直接結合しているため、多少骨が溶けても初期段階ではグラグラと揺れることがありません。天然歯なら揺れで異変に気づくことができますが、インプラントは「末期になって突然抜け落ちる」まで、揺れを感じないことが多いのです。 「痛くないから大丈夫」「揺れていないから大丈夫」という自己判断は、インプラントにおいては通用しないことを覚えておいてください。

 

違い⑤:治療とリカバリーの難易度

天然歯の歯周炎であれば、歯周基本治療や再生療法によって、ある程度の改善が見込めます。しかし、インプラント周囲炎の治療は非常に困難です。 インプラントの表面は、骨と結合しやすくするために、わざとザラザラした微細な凹凸加工(粗面加工)が施されています。この凹凸は骨細胞が入り込むのには最適ですが、一度露出して細菌に汚染されると、細菌の温床(プラークや歯石の住処)になってしまいます。 この微細な凹凸に入り込んだ細菌を、ブラシや器具で完全に除去することは物理的に極めて困難です。そのため、一度インプラント周囲炎が進行してしまうと、完治させるのが難しく、最悪の場合はインプラントを撤去せざるを得なくなります。

 

3. インプラント周囲炎を引き起こす「3つの主要リスク」

では、なぜインプラント周囲炎になってしまうのでしょうか。主な原因は以下の3つに集約されます。

 

1. プラークコントロール不良(磨き残し)

最大の原因は、やはりプラーク(細菌の塊)です。日々のブラッシングが不十分で、インプラントと歯ぐきの境目にプラークが溜まると、そこから炎症が始まります。特にインプラントの上部構造(被せ物)の形状によっては、歯ブラシが届きにくい「死角」ができやすく、そこから感染が広がることがあります。

 

2. 咬合(噛み合わせ)の負担

インプラントには歯根膜(クッション)がないため、噛む力がダイレクトに骨に伝わります。歯ぎしりや食いしばりの癖がある方、あるいは噛み合わせのバランスが崩れている場合、インプラント周囲の骨に過度な負担がかかり、骨の吸収(破壊)を引き起こすことがあります(咬合性外傷)。これがきっかけとなり、細菌感染が起きやすくなる複合的なリスクもあります。

 

3. 全身疾患と生活習慣(特に喫煙)

糖尿病の方は、免疫力が低下しているため感染リスクが高く、治癒も遅くなります。そして何より最大のリスクファクターと言えるのが「喫煙」です。ニコチンは血管を収縮させ、ただでさえ少ないインプラント周囲の血流をさらに悪化させます。喫煙者は非喫煙者に比べて、インプラント周囲炎のリスクが数倍〜十数倍に跳ね上がるとのデータもあります。

 

4. 手遅れになる前に!見逃してはいけない早期発見のサイン

自覚症状が出にくいインプラント周囲炎ですが、いくつかのサインは存在します。以下のような症状が一つでもあれば、すぐに歯科医院での検査を受けることを強くお勧めします。

 

  • ブラッシング時の出血: 歯ブラシを当てた時に血が出る。これは炎症の初期サイン(周囲粘膜炎)の可能性が高いです。
  • 歯ぐきの腫れ・赤み: インプラントの周りの歯ぐきが、他の部分より赤くなっていたり、ブヨブヨしたりしている。
  • 排膿(膿が出る): 歯ぐきを押すと白い膿が出る、または口の中がネバネバする、嫌な味がする。これは感染が進んでいる証拠です。
  • 口臭: 以前より口臭が強くなった気がする。
  • 歯ぐきの退縮: インプラントと歯ぐきの境目が下がって、インプラントの金属部分が見えてきた。

 

5. 当院が行う「インプラントを守る」ための精密治療と予防管理

私たち代官山WADA歯科・矯正歯科は、「歯を残す」ことに徹底的にこだわるクリニックです。それは、インプラントにおいても同様です。インプラント周囲炎に対する当院のアプローチをご紹介します。

 

■ 科学的根拠に基づいた診断

レントゲンやCT撮影による骨の状態確認はもちろん、歯周ポケット検査を行い、現在の炎症レベルを正確に把握します。当院ではマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を導入しており、肉眼では見えないレベルのインプラント周囲の汚れや炎症の状態、被せ物の適合状態などを精密に確認します。

 

■ 非外科的治療によるアプローチ

初期段階であれば、専用の器具を用いてインプラント表面を傷つけないようにプラークや歯石を除去します。また、エアフローなどの特殊なクリーニング機器を使用し、微細な汚れまで徹底的に洗浄・殺菌を行います。抗生物質の投与を併用する場合もあります。

 

■ 外科的治療(再生療法など)

進行してしまった場合でも、諦めずに外科的な処置を行います。歯ぐきを切開して汚染されたインプラント表面を直接清掃・殺菌したり、溶けてしまった骨を再生させるための薬剤を用いたりする治療(再生療法)を検討します。高度な技術が求められますが、当院では専門的な知識と経験に基づき、可能な限りインプラントを延命させるための処置を行います。

 

■ 噛み合わせの管理

炎症のコントロールと同時に、力のコントロールも行います。噛み合わせの調整や、夜間のマウスピース(ナイトガード)の使用を提案し、インプラントにかかる過度な負担を軽減します。

 

■ MTM(メディカルトリートメントモデル)による予防管理

当院では、治療して終わりではなく、そこからがスタートだと考えています。患者様一人ひとりのリスク(虫歯・歯周病のかかりやすさ)を検査・分析し、オーダーメイドの予防プログラム「MTM」を実践しています。 インプラントを長く維持するためには、ご自宅でのセルフケアの質を高めることが不可欠です。歯科衛生士が、患者様のお口の形状やインプラントの形態に合わせた、最適なブラッシング方法を指導いたします。また、定期的なプロフェッショナルケア(PMTC)により、自分では取りきれないバイオフィルム(細菌の膜)を徹底的に除去し、インプラント周囲炎の発症を未然に防ぎます。

 

6. 最後に:インプラントを「一生もの」にするために

インプラントは素晴らしい治療法ですが、それは「メンテナンスフリー」であることを意味しません。むしろ、天然歯以上に繊細なケアと、プロフェッショナルによる定期的な監視が必要です。

 

「構造的に弱い」というインプラントの弱点を理解し、正しく恐れ、正しくケアをすること。それが、せっかく入れたインプラントを10年、20年、そして一生涯使い続けるための唯一の道です。

 

当院は、自由診療専門のクリニックとして、時間をかけた丁寧なカウンセリングと、世界基準の機材を用いた精密治療をご提供しています。 「インプラントを入れたけれど、メンテナンスに行けていない」「最近、インプラントの周りの歯ぐきが気になる」という方は、どんな些細なことでも構いませんので、ぜひ一度ご相談ください。

 

他院で治療されたインプラントのメンテナンスやトラブル対応も、可能な限り承っております(※インプラントのメーカーや状態によっては対応が難しい場合もございますので、まずはご相談ください)。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

渋谷区代官山T-SITE内の歯を残すことを追求した歯医者・歯科

代官山WADA歯科・矯正歯科

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