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歯周病の急性症状(歯周膿瘍)を見逃さない|休日・夜間に起きた時の対処と受診目安

日々の診療の中で、患者様から「昨日の夜、急に歯茎が腫れて痛くて眠れませんでした」「仕事が休みの日に限って、歯が浮いたような強い痛みが出ました」といったご相談をいただくことがよくあります。 お口のトラブルは、不思議と歯科医院が閉まっている夜間や休日に起こりやすいものです。ズキズキと脈打つような痛みや、顔が変わるほどの腫れに見舞われると、不安でいっぱいになってしまうことでしょう。

 

そうした急激な変化は、多くの場合、慢性的に進行していた歯周病が何らかのきっかけで暴れだす「急性化(きゅうせいか)」、あるいは「歯周膿瘍(ししゅうのうよう)」と呼ばれる状態である可能性が高いです。これらは、単なる一時的な疲れではなく、体が発している「限界のサイン」です。

 

この記事では、もしも皆様やご家族が休日や夜間にこうした辛い症状に見舞われたとき、ご自宅でどのように対処すればよいのか、やってはいけないことは何なのか、そしてどのタイミングで受診すべきなのかを、専門家の立場から丁寧に解説します。 正しい知識を持つことは、痛みへの恐怖を和らげ、その後の治療をスムーズにするための第一歩です。どうぞ最後までお読みいただき、もしもの時の備えとしてください。

 

目次

 

1. 「急に腫れた・痛い」の正体は?歯周膿瘍(急性症状)とは

普段はなんともない、あるいは少し歯茎から血が出る程度だったのに、突然激しい痛みに襲われる。これが歯周病の恐ろしいところです。 この急激な症状の多くは「歯周膿瘍(ししゅうのうよう)」と呼ばれます。簡単に申し上げますと、歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)の奥深くで細菌が爆発的に増殖し、膿(うみ)が溜まって出口を失い、パンパンに腫れ上がっている状態です。

 

どのような痛みか

初期は「なんとなく歯が浮くような感じ」から始まり、次第に「ズキズキと脈打つような拍動性の痛み」へと変化します。膿が溜まって内圧が高まると、歯茎に触れるだけで激痛が走り、噛み合わせることも困難になります。

 

なぜ急に起こるのか

歯周病は「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれ、水面下で進行します。普段は体の免疫力と細菌の勢力が拮抗してバランスを保っていますが、何らかの原因でそのバランスが崩れた瞬間、細菌が一気に暴れだし、急性症状として表面化するのです。

 

2. なぜ「今」痛むのか?急性化を引き起こす3つの原因

「毎日歯磨きをしているのに、なぜ急に?」と疑問に思われる方も多いでしょう。実は、お口の中の清掃状態だけでなく、全身の状態や生活習慣が大きく関わっています。

 

① 免疫力の低下(疲労・ストレス・風邪)

これが最も多いきっかけです。仕事が忙しくて寝不足が続いている時、風邪を引いた時、季節の変わり目などは、体の抵抗力(免疫力)が低下します。普段なら抑え込めていた歯周病菌に対して体が負けてしまい、一気に炎症が拡大します。「年末年始やお盆休みに歯が痛くなる」という方が多いのは、休みに入って気が抜けたタイミングや、連休前の繁忙期で疲れが溜まっていることが影響していると考えられます。

 

② 歯周ポケットの入り口が塞がる

歯周病が進行してポケットが深くなると、その内部で膿が作られます。通常、膿はポケットの入り口から少しずつ排出されていますが、入り口が歯石や食べカス、あるいは炎症による腫れで塞がってしまうことがあります。すると、逃げ場を失った膿が内部に溜まり続け、風船が膨らむように内圧が高まり、激痛を引き起こします。

 

③ 噛み合わせの負担(食いしばり・歯ぎしり)

ストレスがかかると、無意識のうちに歯を強く食いしばったり、就寝中に歯ぎしりをしたりすることがあります。歯周病で支えが弱くなっている歯に、過度な力(咬合性外傷)が加わると、ダメージを受けた組織が炎症を起こし、急性化の引き金となることがあります。

 

3. 【保存版】休日・夜間に痛みがでた時の「正しい応急処置」

「夜中で病院が開いていない」「休日で連絡がつかない」。そんな時は、まずご自宅で痛みを和らげる処置を行ってください。あくまで一時的な対処ですが、少しでも楽に過ごすためのポイントをお伝えします。

 

市販の痛み止めを服用する

我慢せずに、市販の鎮痛剤(ロキソニンやイブなど)を服用してください。痛みがピークに達してから飲むよりも、「痛みだしたな」と感じた早めの段階で飲む方が効果的です。用法・用量を守り、可能であれば胃への負担を減らすために空腹時を避けて服用しましょう。

 

患部を外側から「軽く」冷やす

腫れて熱を持っている場合は、冷やすことで炎症を抑え、痛みを緩和できることがあります。ただし、冷やしすぎは禁物です。 濡らしたタオルや、タオルで巻いた保冷剤を、頬の外側から優しく当ててください。「冷えピタ」などの冷却シートを貼るのも有効です。 ※氷を直接口の中に入れたり、長時間冷やしすぎたりすると、血行が悪くなりすぎて治癒が遅れることがあるため注意が必要です。

 

お口の中を清潔にする(うがい・優しいブラッシング)

汚れが残っていると炎症が悪化します。痛くない範囲で、柔らかい歯ブラシを使って優しく汚れを落としてください。歯ブラシを当てるのも辛い場合は、刺激の少ない洗口液(ノンアルコールタイプなど)やぬるま湯で、ブクブクうがいをするだけでも効果があります。消毒作用のあるうがい薬があればベストです。

 

安静にして体を休める

先ほど申し上げた通り、急性化の背景には「免疫力の低下」があります。栄養のあるものを食べて(噛めない場合はゼリーやスープなど)、しっかりと睡眠をとることが、体の中から炎症を抑える一番の薬になります。

 

4. 悪化させないために!これだけは避けてほしい「NG行動」

良かれと思ってやったことが、かえって症状を悪化させることがあります。以下の行動は避けてください。

 

× 患部を温める

「温めると血行が良くなって治る」というのは、肩こりなどの場合です。急性の炎症(腫れ・痛み)がある時に温めると、血行が良くなりすぎて炎症反応が強まり、ズキズキとした痛みが激増してしまいます。 長時間の入浴、激しい運動は控え、シャワー程度で済ませて安静にしてください。

 

× アルコールを摂取する

「お酒を飲んで痛みを紛らわせよう」と考えるのは大変危険です。アルコールは血行を促進するため、一時的に感覚が麻痺しても、酔いが冷めた頃には猛烈な痛みに襲われます。また、薬とお酒の飲み合わせも肝臓に負担をかけるため厳禁です。

 

× 患部を指や舌で触る

気になって触りたくなる気持ちは分かりますが、指には多くの細菌が付着しています。患部を刺激すると、細菌がさらに奥へ押し込まれたり、傷口が広がったりして感染が悪化する恐れがあります。絶対に触らないようにしてください。

 

× 無理やり膿を出そうとする

ご自身で針を刺したり、強く押して膿を出そうとしたりするのは非常に危険です。消毒されていない器具を使うと新たな感染を引き起こし、症状が重篤化する可能性があります。排膿処置は必ず歯科医院で行いましょう。

 

5. 我慢は禁物です!早期受診が必要な症状の目安

ご自宅でのケアで痛みが治まったとしても、それは一時的なものです。以下の症状がある場合は、できるだけ早く歯科医院を受診してください。

  • 痛み止めが効かないほどの激痛がある
  • 顔が変形するほど頬まで腫れ上がっている
  • 38度以上の発熱がある
  • 喉の奥まで腫れて、呼吸や嚥下(飲み込み)が苦しい
  • 歯がグラグラして噛めない

特に、発熱や喉の腫れを伴う場合は、炎症が歯の周囲だけでなく、顎の骨や喉の周囲、さらには全身へと広がりつつある危険なサイン(蜂窩織炎など)の可能性があります。最悪の場合、入院や点滴治療が必要になるケースもありますので、決して放置せず、休日診療所や救急対応の病院を探すことも検討してください。

 

6. 歯科医院で行う専門的な処置と治療の流れ

来院されたら、まずは「今ある痛み」を取り除くための応急処置を優先します。

 

STEP 1:応急処置(切開・排膿・投薬)

膿が溜まってパンパンに腫れている場合は、麻酔をして歯茎を少しだけ切開し、溜まっている膿を出し切ります(切開排膿)。膿が出ると内圧が下がるため、その場で嘘のように痛みが引くことが多いです。 また、患部を洗浄・消毒し、細菌を殺すための抗生物質と、痛み止めを処方します。まずは薬を飲んでいただき、炎症を散らすことを最優先にします。

 

STEP 2:噛み合わせの調整

腫れている歯は少し浮き上がった状態になるため、噛むと当たって激痛が走ります。歯を少し削って噛み合わせを調整し、患部に刺激が加わらないように安静な状態を作ります。

 

STEP 3:原因治療(歯周基本治療・外科治療)

腫れや痛みが引いてからが、本当の治療のスタートです。急性症状が治まったとしても、原因である歯石や細菌が残っていれば、必ず再発します。 専用の器具を使って歯茎の中の歯石を徹底的に除去する(SRP)ほか、必要に応じて歯周外科手術を行い、歯周ポケットを改善して「再発しない環境」を整えていきます。

 

7. まとめ:痛みが引いても「治った」わけではありません

歯周病の急性発作は、火山の噴火のようなものです。薬を飲んだり膿を出したりして痛みが消えたとしても、それはマグマ(原因菌)が一時的に落ち着いただけに過ぎません。地下深くにはまだ原因が潜んでおり、体調が崩れたタイミングで、次はさらに大きな噴火(激痛・抜歯が必要な状態)を起こす可能性があります。

「痛くなくなったから、通院をやめてしまった」 これが歯を失う一番の原因です。 痛みが出たということは、体が「もう限界です、助けてください」とSOSを出しているということです。その声に耳を傾け、二度と同じ痛みを繰り返さないために、そして一本でも多くの歯を残すために、最後までしっかりと治療を受けることを強くお勧めします。

当院では、単に痛みを取るだけでなく、患者様の生活背景や体質を考慮し、「なぜ急性化したのか」という根本原因にアプローチする治療を大切にしています。 痛みへの不安、治療への恐怖、お忙しいスケジュールなど、気になることは何でもお話しください。私たちが全力でサポートいたします。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

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代官山WADA歯科・矯正歯科

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